ゴーン…ゴーン……
ゴーン、という鐘の音とともに灯った 鮮やかな光。
「わあっ」という歓声。照らし出される笑顔。
今年もルミナリエの光が神戸の街を彩った。
神戸ルミナリエは、阪神淡路大震災で犠牲となった方々への鎮魂の意味と、神戸が復興へと向かう希望の光となるように…という意味が込められ、震災が起こった1995年12月から継続して開催されているイベントだ。
21回目となる今年のテーマは「心の中の神戸」。12月4日〜13日の10日間にわたって開催された。今回から、約30万個すべての電球がLEDになったり、例年とは違ったモニュメントが設置されるなど、初の試みが取り入れられたことも話題となった。
元町からメイン会場へ向かうルートは毎年、人の波でごった返す。
土日はメイン会場にたどり着くのに1時間かかることもあるほどで、それほどルミナリエは神戸の人々にとって特別な行事なのではないかと感じた。
最終日となる13日の日曜日に、私は募金ボランティアとしてルミナリエに参加した。昨年に続き二度目の参加で、今年はメイン会場である東遊園地で活動を行った。
ルミナリエは 毎年、来場者による募金の協力があって継続して開催することができている。
つまり、人々の善意の気持ちで美しい光を灯すことができていると言っても過言ではない。この美しい光を来年も、さらにその先も灯すことができるよう募金への協力を呼びかけることが私たちボランティアの役割だ。少しでも多くの方に協力していただくために
募金箱の前に立ち、呼びかけを行った。
モニュメントの点灯と同時に活動開始。
「ルミナリエの継続開催に向けて 募金にご協力お願いします!」
この言葉を何百回言ったのだろう。
道行く人に呼びかけていくうちに、多くの方々が募金に協力をしてくださった。
その年代は幅広く、地元のおじさんから仲睦まじいカップル、お母さんに抱っこされた小さい子どもまで100円を握りしめて…。
募金に協力してくださると、自分のことのようにとても嬉しい。募金をしてくださった方にサンクスカードを渡していくたびに、心の底から「ありがとう」の気持ちでいっぱいだった。
しばらく活動を続けていると「寒いのにお疲れ様、がんばってね」「来年もルミナリエ、開催できたらいいね」などと声をかけてくださる方もいらっしゃった。
寒さも厳しくなってきた時期で、長時間にわたる屋外での活動は根気がいるものだったが、自分たちが楽しむだけでなくスタッフのことも気にかけてくださる人がいることで「よし、がんばろう」と思うことができた。
活動の中で神戸の人の思いやりに触れることができたように思う。人って、あたたかい。
今回この活動を通して、神戸にずっと住んでいる私にとって、ルミナリエは自然と身近な存在だったのだと気づいた。
それは、ただ見学するだけでなくスタッフの一員という立場でルミナリエをみることができたからである。毎年開催されることが当たり前になっていた中で、これほど
無くなってほしくないと思ったのは初めてだった。
21時を過ぎると少しずつ人も減っていき、まもなく消灯のアナウンスと「しあわせ運べるように」という曲のメロディーが流れてきた。
この曲は震災の時につくられたもので、復興の願いが込められている。神戸にずっと住んでいる私は、小学生の頃から歌い継いできたもので、馴染みの曲だ。
聴きながらぼんやりモニュメントを見ていると「支え合う心と明日への希望を胸に」というフレーズと、ルミナリエの光が重なり、込みあげてくるものを感じた。
そして、再び鳴り響く鐘の音。
ゴーン…ゴーン……
ゴーン…パッ。
静かな歓声とともに灯りが消えた東遊園地。
こうして21回目のルミナリエは幕を閉じた。
今年のルミナリエには325万人もの人が訪れたそうだ。
震災を経験した人、その経験を語り継いでいく人…来場者それぞれの目にこの希望の光はどう映ったのだろうか。今回のテーマである「心の中の神戸」。それぞれの想う心の中の神戸は、同じ未来を描けているだろうか。
ただのイルミネーションではなく、震災の記憶を後世に語り継ぐルミナリエ。
来年以降も、あたたかな光が神戸の街を、そして人の心を包むことを願う。
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